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2005.06.24

外傷性くも膜下出血

病棟で仕事をしていたら、「くも膜下出血の患者が来て、今CTを撮っている」という連絡が入った。
夫婦で買い物に行ったホームセンターで妻の後ろで急に倒れて意識がなくなり、救急車で来たという。すぐに病棟の仕事から手が離せなかったので、ICU入院と可及的速やかに脳血管撮影の指示をした。
 脳血管撮影が始まった頃、仕事が終わり、アンギオ室に急いだ。
 放射線科医により3-vessel studyが始まった。右内頚動脈撮影正面、側面、順斜位、逆斜位、ステレオ撮影、左内頚動脈、左椎骨動脈、、、とスムーズに検査はすすんだがどこにも脳動脈瘤が見つからない。
アンギオ室で脳外科医2名、放射線科2名の計4名ですべての血管撮影をレビューしたがやはり「これは?」というものもない。
 CTでは、くも膜下出血とともに右側に硬膜下出血もある。bone imageを見ると、右の側頭部に骨折がありそうである。頭蓋単純X線写真を撮るとやはり骨折線がある。明らかな皮下血腫(たんこぶ)など外傷も無いし、誰も倒れたところを見ていないのだが、明らかな外傷は無かったようである。
 しかし、状況とCTおよび血管撮影の結果からは、「外傷性くも膜下出血」の可能性が高くなった。ICUで血圧管理して経過を観察し、意識状態の推移をみることにした。明日の午前中のもう一度CTだ。2週間以内にもう一度脳血管撮影が必要になるかも知れない。脳動脈瘤によるくも膜下出血は、動脈瘤が見つからないからと言って完全に否定は出来ないからだ。
 でも今日の夜、これから緊急手術ということだけは避けられた。良かった。

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コメント

昨日研修医向けのSAHの講義に出たばかりです。いつも僕にとってホットな話題をありがとうございます。(笑)
CTでhigh densityが確認できなかったら、腰椎穿刺をしろって教科書に書いてるんですけど、昨日それを言ったら「そんなもん今どきしねぇ」と医師に一蹴されました。

P.S. 4じゃなくて3-vessel なんですか?ハテナ?(・_・)

投稿: ユウ@来年研修医 | 2005.06.25 09:16

ユウさん、こんちは。
ガイドラインとして、くも膜下出血を強く疑ってCTで出血の所見がなければ腰椎穿刺、とされています。しかし、再破裂の危険のある患者さんに苦痛を伴う検査は避けるべきというのが普通の考え方です。MRIの撮像法によっては、動脈瘤の周囲の濃いclotが写る場合もあります。軽い出血の場合、くも膜下腔を循環している脳脊髄液によって薄められ流されて行くので、2,3日もたつとCTで所見がわかりにくくなることがあります。大事なのは発症様式と時間、そして医師の勘でしょうか?
 3-vesselとは両側の頚動脈撮影と優位側(通常左)の椎骨動脈撮影です。右椎骨動脈と後下小脳動脈との分岐部が左からの造影剤のrefluxで確認できれば、4-vesselの検査が出来たことにすることが多いです。椎骨動脈は左右が一緒になって脳底動脈になるのであとはどちらから撮影してもほぼ同じです。

投稿: balaine | 2005.06.25 10:15

CTで出血が認められるのに血管造影で出血源が不明の場合疑われるのは 1動脈瘤見落とし(というか写らない場合) 2橋周囲出血 3脊髄からの出血
といったところでしょうか?

投稿: いのげ | 2005.06.25 15:48

いのげさん、私の経験では嚢状動脈瘤の場合、写らないということはまずありません。見つからない場合は「見つけられない」ことが多いと思います。出張中に「脳動脈瘤が無い」と連絡を受けた患者のアンギオを見直すと疑わしいところがあり、そこを再度検査するとやはりありました。角度を変えてしつこく検査するという姿勢が大事だと思います。
あとは解離性脳動脈瘤で出血の軽い場合(2の橋周囲出血も同じ?)も破裂部位が特定できないことが時にあります。
今回の症例は、今日のCTやその後もう一度発症時の様子を考え直しても「外傷」で良いと思います。

投稿: balaine | 2005.06.25 16:41

ふむふむ。
勉強になります・・・!

投稿: ユウ@来年研修医 | 2005.06.25 20:24

あやしいところをみつけて そこが一番良く見えるように角度を微調整して再度造影、、、
延々と繰り返すとだんだん疲れたりして。
フィルムでみたらなんとかわかりますけど
シネだけだとわかりにくいです
アンギオは年季の差がもろに出てシタッパはつらい

投稿: いのげ | 2005.06.27 23:39

私の時も、出血部位と特定するのに、あっちから写したり、
こっちから写したり、苦労しました。って医師に言われました。
家族は、検査に行ったきりちっとも帰ってこないので、
すごく心配したそうです。

投稿: mayako | 2005.06.28 07:38

母の時も確か救急搬送から2,3日たってようやく特定できたんですよ。
意識があって頭痛を訴えるのに、何の処置もしてもらえず(管にはいっぱい繋がれましたけど)、母は不満顔でしたもの。

投稿: ムンテラ | 2005.06.28 12:14

いのげさん、mayakoさん、ムンテラさん、
 いのげさんのお話しは、昭和40年代の「よ〜い、どん!」「ガチャン」「はい!」の時代のアンギオですね。(^^)
アンギオもすすんでいまして、今やDSA(digital subtraction angiography)
も3Dは当たり前で、workstation上で脳の血管をくるくる回転させて任意の方向から見ることが出来ます。それでも診断に苦慮するものはありますが、3d-DSAと3d-CTAを組み合わせればわからない破裂脳動脈瘤はほとんどない、と言えるくらいの時代になって来たのではないでしょうか?3d-DSA、うちにはまだ入っていないですけど。。。。

投稿: balaine | 2005.06.29 15:00

最近同じような症例を経験しました。しかし骨折もなく、血管造影もされないままなくなりました。私としては少し心残りで‥。
くも膜下出血の原因としては外傷性と非外傷性とどちらが多いのでしょう?信頼できる統計があったら教えていただきたいものです。鑑別は臨床的には血管造影だけですか?

投稿: 外科志望の研修医1年目 | 2010.12.02 19:47

「外科志望の、、、」様、コメントありがとうございます。
どちらが多いか、、、はっきりしたデータを持ち合わせていませんが、頭部の外傷の方が頻度は多いので、外傷性クモ膜下出血の方が動脈瘤破裂によるくも膜下出血より多いと思います。
しかし、外傷性クモ膜下出血は、よく見ると急性硬膜下血腫を伴う事が珍しくなく、特に死に至る様な外傷性クモ膜下出血ならば、硬膜下血腫以外に脳挫傷、特に瀰漫性軸索損傷といわれる外傷による変化が起こり、画像上は小さな点状出血を認めたり、明らかな出血はないものの脳全体が浮腫んだ様な所見が観られたりする事が多く、受傷後から強い意識障害を認めます。
そういう所見に乏しく、死に至ったとすれば「破裂脳動脈瘤」が原因であった事は否定できません。明らかに「脳挫傷」を来す様な外傷の機転がない場合は脳動脈瘤の有無を検索すべき症例ではなかったかと推測します。

投稿: balaine | 2010.12.03 00:55

こんにちは、
79歳の親父が今月4日に家の前で転倒して救急車で病院に運ばれました。そして、外傷性くも膜下出血で入院。当初は意識があったのですが、5日目から傾眠状態に。それで昨日、カテーテルで血管を拡張する手術をしたのですが、傾眠状態はちょっと改善しただけ。なので、心配な毎日を暮らしています。

投稿: おーくぼ | 2011.01.14 17:07

おーくぼ様、「外傷性クモ膜下出血」とは脳挫傷によって起こるものです。発症様式と検査結果によっては、脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血と鑑別が難しいこともあります。
5日目から傾眠状態、というのはくも膜下出血によって脳血管攣縮が起きた可能性が考えられます。脳挫傷による血腫の影響ではなく血管攣縮で意識障害が起こっているのだとすると、外傷の結果血管が縮んで脳梗塞が出来てしまい、回復には時間がかなりかかるか、困難となる怖れもあります。主治医の先生にきちんと説明をお聞きください。

投稿: balaine | 2011.01.16 01:34

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