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2005.06.22

夏至+1

 昨日は夏至だった。ということは、今日から昼間が少しずつ短くなって行く訳だ。少しずつ冬に近づいて行く訳だ。これから「夏だ!」という感じなのに変な事実ではある。
 実感することと事実が必ずしも一致しないことは病気にもよくあることだ。
 「右目がおかしい」ということを主訴に眼科を経由して神経内科を受診した患者さんが、CTとMRIで脳腫瘍を発見され脳外科に紹介されて来た。「目がおかしい」というのは医学的に言えば、左後頭・頭頂葉の腫瘍と周囲の浮腫による「右側の視野障害」である。しかし、なかなか「視野障害」のことを自覚症状として正確に説明できる人はいない。神経膠腫を疑って入院させたが胸部X線写真を見てすぐに肺がんの可能性が高いことがわかった。
転移性脳腫瘍である可能性が高い。脳の病変は一個なので手術摘出したいところであるが、全身状態や原発の肺の状態、他臓器への転移の有無などを呼吸器内科、肺外科と相談する必要がある。
 がんの治療は進歩している。癌と診断されても「治癒」したり相当長期間有意義に生存する可能性も高くなっている。その中で肺がんは増加していると言われている。肺がんの2例に1例は脳転移を来すと言われている。原発巣の肺よりも先に、転移した脳腫瘍の症状で発見される症例も増えて来ている。腫瘍があるなら開けて取る、という単純な疾患ではない。全身の状態、患者さんの社会的・家庭的・個人的因子、転移性脳腫瘍による症状の有無、腫瘍の大きさ、部位、転移の数、呼吸機能の状態、etc.etc...総合的に診断し治療方針を立てて行かなければならない。脳への転移が見つかった段階でガンとしてはstage IVで、「治癒」を望むのは難しい状態である。しかし、上手く治療すれば相応に長期間有意義な生活を送ることはできる。家族そして本人への告知の問題も生じる。
 脳卒中とは別な次元の闘いがまた始まる。

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コメント

インフォームド・コンセントといわれるが、患者がいくら勉強しても、医師の知識と経験にはとうてい及ばず、情報量では、圧倒的に医師が優位にたちます。
きょうのような書き込みは、患者の私には示唆されること大でした。
ひげ鯨先生、これからもこんなレクチャーをお願いいたします。

投稿: 侘び助 | 2005.06.23 08:05

その患者さん、balaineさんのところにまわりまわってきて、でも来てよかったです。患者はわかりませんから、どこへいけばいいのか。行ってからも医師次第ですし。私も最初は眼科へ行ってそれから、脳外科でした。でも本当は2年前にも1度眼科で、おかしいと訴えてるんですけどね。最初から脳外科へは行きませんね~~www

投稿: @むーむー | 2005.06.23 17:24

あはは、むーむーさん、こんにちは!
私も初めは検診で眼科で緑内障の所見が指摘された。その1年後大きく派手に転んで、
1週間後、まだ痛いので念のため近くの脳外科へ行ったら、CTはなんでもないが、ちょっと気になるとか言われてMRIを撮った。
そしたら、腫瘍らしいといわれ、大きな病院へ行くようになった。
そういえば、その数年前から体のバランスがたまに崩れて(家の中でだが)、まっすぐ歩けないことがあった。
ま、とにかく視床下部のグリオーマだろうといわれ、自覚症状はないので検査は続けている。
最初は、グーではなく、最初は目だった。

投稿: 侘び助 | 2005.06.23 18:22

むーむーさん、私の勘違いで書き込んでしまいました。失礼をお詫びいたします。

投稿: 侘び助 | 2005.06.24 19:51

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