緊急入院?
深夜の3時に救急外来から呼ばれた。
81才の頭痛の患者。2,3日前から頭痛あり、昨晩(6/1の夜)我慢できない程の頭痛を訴えたため、家人が救急車を呼び当院の救急外来へ来た。
本当は、私の出番ではなかったのだが、当番の先生をポケベル、携帯などで数回コールしてもバックコールがない、ということで当直医が困って私のところに連絡して来た。
4年前に右側頭葉の脳梗塞を起こして当科に入院した経緯があり、81才ではあるが当科外来で降圧剤と抗血小板薬を投与中の人であったため、脳外科が呼ばれた。CTでは古い脳梗塞以外、くも膜下出血も脳出血もなし。診察したが、右頚部から後頭部にかけて痛みを訴える以外には所見なし。項部硬直や髄膜刺激症状も無いし熱も無い。家人に聞くと、晩ご飯は普通に食べたということ。
通常ならこのまま自宅にお帰り願ってもいいところであるが、1)強い頭痛であったこと、2)救急車で来院していること、3)夜中の3時過ぎであること、などから「経過観察入院」とした。
医療費抑制ということから考えると、この人が救急車で救急外来を受診したこと、頭痛だけでCTを撮ったこと、頭痛以外に症状が無いのに入院させたこと、これらはすべて「不要」または「過剰」の医療と言われるかもしれない。でもそうやって切り捨てていっていいのだろうか?
医療費を抑制することを現場に要求することは、(明らかに過剰な医療を除いて)グレイゾーンの患者を危険に晒しはしないのだろうか?進歩した、安全性を追求する現代医学が、お金のかかるものであることを何故否定するような動きがあるのだろうか?
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コメント
日本の医療費の過剰問題を、正確に検証するよう、医師会はどこかに働きかけてまとめたらいかがでしょうか?
丁寧に診てもらうことは患者にとって本当にありがたいです。
個人的には医療費は高いとは思いません。
留学生たちには、国民健康保険に入って、体を守るように薦めています。万一病気になった時、安心して誰もが平等に受けられる医療に、留学生は驚きます。しかも、学生だと、自己負担分まで申請すれば後で多くが戻ってきます。
発展途上国の研究者たちは多くが国のエリートですが、この保険のおかげで、日本にいる間、実にひんぱんに医療機関に罹ります。最新の検査がこんなに安いといって。
いつぞやは夫婦で来ていた国際交流基金の招聘者は、夫のいびきがすごいからといって、病院にいって、大笑いしました。
逆に私は家族でアメリカに滞在したことがありましたが、保険料は日本と比べるととても高かったのを覚えています。
投稿: 侘び助 | 2005.06.02 09:50
侘び助さん、コメントありがとうございます。
私も合計で2年3ヶ月の在米生活がありますが、歯の治療を仕方なく受けた以外は一切病院にかかりませんでした。日本から自分用に持ち出した薬で我慢しました。医療費、高いですから。
今朝、あるテレビ番組で、日本が戦後中国に行っているODAやその他の経済援助などが数兆円にのぼっていることを知りました(その他にも、終戦直後、中国大陸にあった日本の資産、満鉄とかダムとか港とか、全部中国に接収され今も利用されていて現代中国の躍進に役に立っていることも知りました)。政治に口出しするつもりはありませんが、中国、北朝鮮に対する不相応とも思われる、国民の血税による経済援助のお金を全部医療に回せば、健康保険制度破綻の一部は解決するんじゃないかと身勝手な考えもできますよね。
投稿: balaine | 2005.06.02 14:08
健康保険制度破綻とか、年金破綻とか、私も苦手な領域の話題がセンセーショナルにマスコミは報道しますね。
本当かな?と思います。
先端医療は別にして、これからは予防医学に個人が心する、という時代になるのかなと思います。ひげ鯨先生が講演するように。
これだけ日本が豊かになって、みんなが費やす食べ物や旅行、ブランド品のお金と比べて、体(命)を診て貰う医療費が安すぎると、私は思ってしまいます。
しかも、予測どおりにならないで、不幸な結果を招くと訴える風潮になっています。
体は(心も)不確実なものなんですよねえ。
代替医療は、施術する人によって、同じことをしても値段が大きく違います。美容師だって、指名すると値段が違う。
やっぱり今の医療費は、得られる安心に反比例して安すぎると、私は思うんだけど、こんなことを言ったら、生意気だと思われそう。
投稿: 侘び助 | 2005.06.02 15:53