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2005.06.09

外来の苦痛

きのう、今日と少し凹むことがあった。
外来というのは、いろんな患者が来る。午前中に来れる状況にもかかわらず、自分の都合で午後に受診する人もいる。昨日の怪我なのに、今日の午後になって受診する人もいる。それでも医者はニコニコして「どうしたんですか?それはご心配でしょう」と患者の気持ちになって診察をしなければいけない「サービス業」らしい。
 まあ、手術中ならば無理な訳だが、会議中とか入院患者の診察中とか診断書などの書類作成中ならば、中断して外来で患者を診ることは出来る訳だ。
 昨日夕方に転んで頭を打った子供が「今朝」いつもより元気がないから心配で念のため連れて来た(午後3時過ぎに)という母親に、「症状が心配なら午前中に連れて来なさい」と言ったら「いつでも診るのが先生の仕事でしょう?」と言われたので短気な私はカチンと来て、元気に走り回る子供はナースにまかせて母親に説教をした。しなくてもよかったことである。どうせ説教しても理解するような相手ではなかったかも知れない。
「はいはい、あ〜、走り回ってるし元気ですね。頭の写真も異常ないし傷もないので大丈夫ですよ。お大事に。」とさっさと外来を終わらせればそれで済んだことであるが、わたしとしては「夜中の2時でも3時でも必要ならば私たちは診察するのだから、心配なら、症状が何かあるならすぐに連れて来なさい。」と説教をした。その母親は
「もういいです!」と吐き捨てるように帰っていった。相手も相手だが私も良くない、と自分で思う。
 親は子供のためには鬼になる、と病院では言われている。小児科は患児の診察はもちろん大事であるが殊に母親への対応が重要である。今日のその患者さんは結局なんともない、ただの頭部打撲なのだが親は「家庭の医学」などで「こんな症状があったら病院に」と調べて来たらしい。でも患児は元気で椅子をくるくる回したり、フィルムをはるシャーカステンを触ったりして遊んでいる。元気だから心配ないですよ、とそれだけ言って帰せば良かった。。。
 私は、特に軽症の、というか何か病気なの?というような、でも心配性の患者がとても苦手である。だから「日本のスタイル」の脳神経外科では外来が苦痛で仕方がない。そういうタイプの患者さんは欧米なら、家庭医から精神神経科医に回されるのが通例だと思う。脳神経外科医が診察することはまずない。今日の子供だって、家庭医か救急外来のレジデントが診察してそれでおしまいである。脳神経外科医が診察するのは、出血があるとか、大きな外傷があるとか、意識障害があるとか、そう言う場合である。「心配だから念のため連れて来た」という人を脳外科が診察することは、欧米のシステムではあり得ない。でもここは日本だ。

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コメント

こんな時こそ

Tomorrow is another day !

投稿: 侘び助 | 2005.06.09 20:31

先生の施設にはレジデントはいないんですか?ベテランが診る種類の患者じゃないですねえ

投稿: いのげ | 2005.06.09 22:23

私の行っているような大学病院では、
紹介状がない限り、
いきなり脳外科で診てもらうことはできません。
患者としては、行ってすぐ、
先生のような専門の先生に
診ていただけたら安心なんですけど、
やはり、何から何まで、
しかも、そんな態度の患者まで診るのでは苦痛ですね。

投稿: mayako | 2005.06.09 22:48

「患者は人間だが、医者も人間だ」という恩師の言葉を思い出しました。

投稿: ユウ@来年研修医 | 2005.06.09 22:56

皆さん、コメントありがとうございます。激励されると己の未熟さが身に滲みます。凹んでも立ち直るのが早い私ですが、まだ少し凹みモードです。

いのげさん、ここの脳外科にレジデントはいません。ていうか、田舎の市中病院というのはギリギリよりも少ない数でやっています。都心のこの規模の脳外科なら脳外科医が4, 5人、レジデントが1,2人いてもおかしくありません。500床以上の規模ですから。でもここでは副院長を含め3名でやってます。私の下の医師も12年目の(普通のないかなどなら)ベテランです。同じくらいの規模で脳外科2名でやっている病院が県内だけで4カ所あります。
 だから2年目だろうが12年目だろうが22年だろうが、あまり当番日に差を付ける訳にもいかず、私は月のうち12~14日は当番です。土日も半分は当番をしています。今週末は2日とも当番です。ふ=

投稿: balaine | 2005.06.10 09:20

うちの主治医もこの前 同じようなこと言ってたな~(笑)医者は患者選べないからね~なんて。
ほんと、大変な お仕事ですよね、
頑張ってください ♪
先生のブログに私も励まされています☆

投稿: 則香 | 2005.06.10 09:41

仕事って大変だなと思います。誠実にこなすには無心の境地にならないと務まらない。
若い頃、夫とよくぶつかりました。
「研究者に休日はない」「女が足を引っ張るから男がだめになる!」
とかいって、家にはあまりいなくて、子供がいても休みがないような30代だった。
今は、今は、仲良し50代ですが。

投稿: 侘び助 | 2005.06.10 09:55

 ちょっと耳が痛いです(汗)。「心配性の患者は苦手」と言われると、「心配性の家族」としては同じように迷惑をおかけしているんだなと思います。気をつけなくては...(笑)。
 以前朝日新聞に載ったと思いますが、いわゆる家庭医が少ないのだと思います。患者との会話からあらゆる方面の病気を推察できる医師が足りないから、ひげ鯨先生のような専門家にしわ寄せが行くのでしょうね。
  

投稿: ムンテラ | 2005.06.10 10:44

ムンテラさん、いえ、その「心配性」が苦手なのではなく、そう言う人と話しをする場合、私の体力、気力が安定しているときならいいのですが、疲れたりしているとそれがもろに表情に出てしまう人間なので(未熟です)苦手と言ったのです。
「心配してる」「不安なんだな』「なんともないことをわからせてあげなければ」とよく言えばサービス精神が旺盛なので一生懸命やりすぎるのだと思います。ところがこちらの意欲をそぐような、またはカチンとくるような言動をされると(このやろう、こちとらあんたのために会議を途中で抜けて来たのになんだその態度は!)見たいに怒りがすぐにこみ上げて来ちゃうんです。人間ができていません、、、

投稿: balaine | 2005.06.10 14:05

「怒りがすぐにこみ上げて来ちゃうんです。」

それって自然なことですよね。
いい人にならなくていいんじゃないですか?

投稿: 侘び助 | 2005.06.10 16:08

 先生、おっしゃる意味はわかります。でも、きっと頑張り過ぎですよ。 
 医師に限らず、人間体力が充実していなければ、気力も伴いませんよね。まして他者に対する気配りなんて...。
 母が入院したお陰で、主治医の疲労が読み取れるくらいになりましたけど、外来患者には医師の事情をご存じない方も多いと思いますし。感情が多少表情に出るのは仕方ないと思います。それをカバーしようとさらに精神的負担を抱えるほうが危険だと思いますけど。

投稿: ムンテラ | 2005.06.10 17:26

侘び助さん、ムンテラさん、ありがとうございます。
しかしですね、現実は「科長会議」とか「病院運営会議」とかに出席しますと、「患者様の声」という投書が皆に配布されるのです。個人名が書いてあったり、個人攻撃の場合は、管理者がその個人を呼び出して事情を聞いたり注意を与えますが、「内科の看護師は、、、」とか「○○科の待ち時間が長過ぎる」とかの投書は皆で情報を共有することになっています。
 どんなに相手が理不尽でも、犯罪でもおかしていない限りは、「病院」にとって(私個人にとってではない)患者様は神様(?)。文句を言われるすきをつくったり問題を起こしている部署が悪い、ということですぐに改善が要求されます。
先日なんて、「朝廊下ですれ違う時に挨拶がない」とかいう投書があり、受付部門などでは「おはようございます」などと挨拶するのは当たり前でも、廊下ですれ違う場合、それが患者さんなのか誰なのかわからないこともあるし、何時までおはようと言えばいいのか?とかくだらない会話があり、結局「各自の良識に任せる」ということになりました。は〜。
 医者が患者に対して絶対的に優位な立場に立っている、とか言われますが、患者なら何を言ってもいいのか?ということも「稀」ですがあることもあります。医者は患者さんを選べませんし患者さんの悪口を書いたりしたら、くだんの水戸の女医ブログ事件みたいになってしまう恐れもあります。
 結局、世間が医者に要求していることは、「いい人」になること、少なくとも「いい人を演じる」ことのようです。私はそれが苦手です。

投稿: balaine | 2005.06.10 17:43

結局、世間が医者に要求していることは、「いい人」になること、
*****************************

そんなことはありませんよ。私も脳外科の医師に何回も診ていただくのでお会いしますが。
自分の小ささを知ることが、どの職業であれ、働いて得る大きな収穫だと思います。
そのことに気づくことが、より素敵な人になるステップのような気がします。
クラシック音楽は、そんな素敵な心を知った人々に、広く長く愛されているんだと、私は独善的に思ってしまいます。大丈夫!

投稿: 侘び助 | 2005.06.10 18:57

「医者、役者、芸者」
といって、医者は(感情を抑えて)演技が出来なければならず、同僚や先輩だけでなく患者や家族を喜ばせ満足させる「芸」ができなければならない、と教えられたことがあります。いい意味で、です。
 侘び助さんはじめ皆さんの言葉はありがたいですが、演技が出来ず芸のできない自分を戒めるばかりです。

投稿: balaine | 2005.06.11 11:52

則香さんがいつも言ってて、私も思っているのですが、誠実で、正直で、精一杯やっていればいいではないですか、blaineさん♪ぜんぶ完璧にまでなんて、神様ではないのだから(笑)ワカランチンのオバカにはある程度まで、言いたいことは、お情けで言っておいて、あとは放っておきましょう、冷たく(爆)

投稿: @むーむー | 2005.06.11 12:45

是非専門医の立場から、generalistの必要性をもっと訴えてください。(ちなみに件の患者さんは、精神科でなくgeneralistで十分対応できます。十分'common'の範疇ですので。)

投稿: BLOGMASTER-FM | 2005.06.15 23:00

BLOGMASTER-FMさん、generalistの育成はとても大事ですが、日本の医療システムを変えなくてはgeneralistが活きてきません。誰だって、「頭が痛い」時は「もしかして、、、」と直接脳外科医に診てもらうことを望むでしょう。
generalistが市民権を得るためには実績と時間も必要です。軽症の外傷、突然発症ではない頭痛のみ、不眠や不安に伴う頭痛やめまいなどの愁訴を脳外科医が診なくてもすむような制度をつくる必要があります。最も大きいのは保険診療制度の改革だと考えています。誰がどこで診ても、支払う金額が同じであるなら、「より大きい病院」「より専門の先生」となるのは自明の理です。

投稿: balaine | 2005.06.16 15:01

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