東北は肌寒い
今人気の「お笑い芸人」と言っていいのか、熊本出身のヒロシ風に。
「3日間、遊ばずに勉強だけして帰ってきたとです。小倉駅の新幹線ホームで、『このまま九州におりたかっ』と思ったとです、、、。」
新幹線の車内案内の声(イントネーション)が、やはりここは九州バイ、ち思たとですよね。
「唐津方面はxx番線」という声の、最後の「ばんせん」が標準語と全然違うたとです。
朝620に起きて645からのモーニングセミナーだけ聞いて、843の新幹線で博多に向かい、福岡空港1000発、羽田1200発の乗り継ぎでもう帰ってきました。先週オペした患者さんや新しく入院した患者さん中心にICUや病棟をちらっと回ってきました。
まじめな脳外科医は本当にまじめです。朝は、軽食付きで645〜830のモーニングセミナーというのがあります。人気のあるレクチャーでは用意した椅子では足りずに立ってジーーと我慢して聴講している人もたくさんいます。早朝から脳外科医で溢れています。
私もいろいろ聞いてみたいのですが、昨日の朝は「脳動脈瘤手術」、けさは「微小血管減圧術」のセミナーを聞きました。もちろん滅多にお目にかからないような特殊なケースや難しいケースの話しもありますが、「脳神経外科コングレス」は脳外科医の生涯教育、若手医師の勉強の場というコンセプトなので、動物実験だとか基礎的な研究とかの発表はいっさい無く臨床に直結したレクチャーが中心です。もちろん最新の知見も交えますが、「日常、脳神経外科疾患を治療していくにあたって知っておくべき『今』」という感じのレクチャーが多いのです。
前にも書いたように人の手術の映像などを見ていて、もちろん勉強にはなるのですが、「ん?なんでこんなに術野が血だらけなの?(もちろん本当に血だらけなのではなく、回りからのじわじわと出る出血や血管を損傷したためか手術野に血がにじんでいる、ということ、つまり綺麗ではない、という事を意味する外科医の言葉です)」「げげ!なんであんなに神経をひっぱたりしてんの?」と思う事もあります。
自分の手術だって第3者に評価してもらわなければ、みずから「うまい」とか「きれい」などと言うのは「自画自賛」「我田引水」。でも学会で人にレクチャーする講師の先生の手術より自分の方が綺麗に手術してるよな〜、脳や神経に優しく手術してるよな〜、と思う事はよくあります。
人の振り見て我が振り直せ、ですかね。
今回の小倉まで学会旅行で感じた事をいくつか。
1)山陽新幹線「こだま」の自由席は広い!ていうか山形新幹線が狭すぎる!「こだま」は横も前もゆったり4人席。山形新幹線は、おそらく「こだま」の3席分の幅で4席並んでいます。通路も狭い。席と席の間のひじかけも「こだま」は山形新幹線んの倍以上あります。
山形新幹線には踏切が100以上あるのですが、できた当時踏み切り事故が多発してどんどんスピードが遅くなり特急なみになりました。山形県民が文句を言ったら、JR東日本は「あれは『新幹線ではございません。ミニ新幹線です。』と答えたので県民が怒ったという話しを思い出しました。
2)九州は海や山の形、色が違う!緯度、経度がちがうのですから当たり前でしょうが。だって地図で見れば、小倉や博多は山形よりは韓国の方が近いのですからね。あ〜、九州、よかね〜。
3)大学を離れて2年。研究や教育そして雑務の多い日常から診療が中心の生活になってうれしい反面、不安もたくさんあった。でも最近の学会での発表を聞いたり見たりして普段の自分の診療を振り返ると、おおきな自信が湧いてくる。
「患者さんに、ボストンの患者もロンドンの患者も東京の患者も山形の患者もない」
これはうちの教授の言葉。どんな街にいようと、どんな病院にいようと、自分のベストを尽くし自分の力の及ぶ範囲内で最高で最良の医療を提供すること。もちろんすべての事ではないが、一部の技術や治療手技においては、世界レベルでやっていると思っている。自分の手術映像を国際学会に出しても恥ずかしくないような手術をしているつもり。それよりも大学での手術後検討会などに出席して、教授にお叱りを受けないようなきちんとした丁寧で綺麗な手術を心がけている。
私は厳しい指導を受けて恵まれているのだろう。日本国内には、「ン?」というような脳外科医もいるのではないか?。若い時分にろくにちゃんとした指導も受けられずに「外」病院に出て、そこで見よう見まねやテキストやビデオを参考にやってみて試行錯誤しながら技術を身に付けてきている医師もいるはずである。私は、なかなか執刀医にはなれなかったが、長く教授は先輩医師の助手をしていろいろ見てきた。初めてやる手術でもすでに何回も経験しているに等しかった。ただ最初の頃は、頭で思った事と手先の現実が一致しない事も少なくなかったので、手術はいつも不安と緊張であったが、今は「自信満々」とはいかないがイメージと手の動きに乖離は無いと思う。今回の学会でもそういう思いを強くした。
今回の移動中に読んでいた本にも啓発を受けて、イメージと手先の現実、運動のフィードバックとフィードフォワード、こういう観点でフルート(に限らず楽器、に限らず身体運動をともなう特殊技能、技量)の練習法をまとめていけるはずである。
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コメント
おつかれさまでした。式典の演奏から、お勉強まで、いろいろとなさるとですね。せっかく九州まで行きなさって、美味しいもんば食べる暇あったとですか?
ひげゴジラ先生も行かれましたよ。盛岡で座長をされた方です。
投稿: @むーむー | 2005.05.15 16:44
お帰りなさい!
先生、気合入ってますね。
いつも元気づけられます。
先生の「仕事においては推測が必要」と言うアドバイスでミスの多かった私は、今までのやり方を反省し、現在、立て直しているところです。
明日から中間試験ですが、テストの結果から自分の教え方で反省すべき点は反省して次へと生かしていきたいと思っています。
先生のお仕事振り、参考になります。
これからもよろしく!!
投稿: ふにゃ | 2005.05.15 19:02
先生、すいません
夫がまたお尋ねしたいとのことで
1、啓発された本の題名を教えてください。
2、具体的にどんな方法を使って学習をさせよ うと思っているのでしょうか?
この2点について、よろしかったら、お教えください。
投稿: ふにゃ | 2005.05.15 19:10
@むーむーさん、ふにゃさん、コメントありがとうございます。
別コメントへのレスに書きましたが「ヒゲゴジラ」先生から改めて挨拶されて少しうろたえちゃいました。知ってる人に見られているかと思うと恥ずかしいのです。
ふにゃさん、「推測」ではなく「想像力」と書いたと思いますよ。イマジネーション、です。何の世界でも大切だと思います。
ふにゃさんの夫さんへ、こらから本サイトの「フルート練習法」の方に書いていく予定ですので、ネタばらししたくないのですが。。。
前野隆司著「脳はなぜ「心」を作ったのかーー「私」の謎を解く受動意識仮説」;筑摩書房、2004年11月15日第1刷
です。ご参考になれば。
方法はまだ模索中です。簡単に言えばイメージトレーニングですけどね。
投稿: balaine | 2005.05.16 09:16
どうもすいません
「推測」と「想像力」を間違えてしまって。。。
これだからミスも起こってしまう はあ。。。
それから、ねたばらしまでして頂いて
ありがとうございます!!
夫も大喜びすると思います
投稿: ふにゃ | 2005.05.16 18:54