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2005.05.29

今日も日直なり

私は院内の医師の中では、年齢で言うと中堅の上のほうなので、平日の夜間の宿直は免除されている。そのかわり、土日祝祭日の日直は月に1、2回のペースで回ってくる。先日したばかりだと思っていたが今日も日直だ。
 今、当院では、内科系と外科系の医師2名で全館日直、宿直にあたっているので、救急車が連続して来たようなバタバタした状況でない限り、前半と後半に分けている。今日は私が後半。午後12時半から17時まで。救急外来は、急患が来なければ暇。今、3名の診察をしてX線撮影や頭部CTのオーダーをし出来上がるのを待っている。
 前半は、院内で待機していれば良かったのでその間にHCUと2つの病棟を回診した。そう、今は、ICUに患者がいない。重症の入院が少なかったとこと、重症だった患者が改善して一般病棟に移動した事、などから脳外科は0になっている。心筋梗塞を中心に、循環器内科と心臓外科の患者が占めている。「脳外科祭りですね?!」とICUの看護師に言われた時から4週間経って、一日待って手術したくも膜下出血の70才代の女性は明日退院である。後遺症はまったくない。出血が少なくグレードが2と軽かった事が幸いであった。その人の一日前に手術した50才代の人は、術後手術側の目が失明している。眼科に診てもらったところ眼底出血と硝子体出血ということで、くも膜下出血に時々合併する目の中の出血だと思うが、術後しばらくその目の回りが腫れていて眼圧(眼窩圧)が高かったので手術そのものに原因がないのか反省しなければ行けない。この失明がなければもっと早く活動を開始していたはずなので、今まだ少しボンヤリしているのはそれも一因かもしれない。でも、あと1、2週のうちに自宅独歩退院である。運動麻痺などは全くない。
 言語障害が出ていたくも膜下出血の患者さんも、笑顔を見せてかなりスムーズにしゃべるようになった。言語療法士からOKが出れば退院である。
ーー
 今日は日中は50名弱の急患数。救急車が5台。救急車搬入患者数8名。入院2名。比較的平和な救急外来であった。サッカーやバスケなどの試合中の外傷と頭痛患者の緊急受診が目立ったがほとんどたいした事はなく帰宅した。この中には、平日に来れば?という人もいるし、「CTを撮って欲しい」と言われたから撮ったけれど、脳外科医である私が診察した上では、必ずしも緊急CTは必要なかったんではないか?という人もいた。こういう人達が日本の医療保険制度を破綻させている一端を担っているのだ。しかし病院の日直、宿直医としては、救急外来を受診した患者や家族の要望のあった検査を、「不要だ!」として撮らずに後日万が一それが間違いであったり、その時は正しくても後日本当にくも膜下出血で倒れたりした時に、「あの時、急患室で診た医者が悪い」「CTを撮ってと頼んだのに、いらない、といって撮らなかったから具合が悪くなったんだ」と訴えてこられたら、当直医の立場はかなり不利である。結局、病院や自分を守る意味でも「不要かな?」と思うCTを撮ったりする事があるのである。「脳ドック不要論」よりも、こういった問題を論じて欲しいものである。
 先日行われた病院の「経営改善会議」では、未収金の問題があがっていた。つまり医療を受けたのに金を払わない患者が相当いるのだ。特に、一回だけ急患室に来た患者に多いらしい。督促状を何度も出しても払わない。なしのつぶて。その額は、積もり積もって数千万円になっているとのこと。こういう事が全国で起こっていると思う。それなのに、マスコミは医者や病院だけ叩く。どうして、不条理な、非常識な患者の事は叩かないのだろうか(答えは、その方が新聞や雑誌が売れるから、とわかってはいるのですが)。

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コメント

最近時々HPを覗かせていただいていますが、初めてお便りいたします。発病前の脳外科の患者です。
「マスコミは医者や病院だけ叩く。どうして」

そうですね、マスコミはそんなもんだと思っています。友人にマスコミで働いている夫を持つ人が複数います。就職する時はみんな真摯な気持ちで入りますが、入ってみると、マスコミは高給だしちやほやされるから、どうしても感覚が変わってくるといっています。
まあ、そうならない人ももちろんおいででしょうけれど。
若い友人がNHKへ入ったけれど、1年もしないでやめてしまったことがあります。
理由はここでは書きませんが、ご推察ください。
私の夫が、さる新聞記者から取材を受けたことがあります。主人の仕事場まで、電車でくれば簡単なのにハイヤーできました。社の規定により、タクシーではなくハイヤーを使うことになっているそうです。
主人は、そんな贅沢なことをしないで、購読料を下げたらどうですか?と水を向けたら、新聞では良く書かれなかったそうです。
マスコミは第4の権力で、情報化の波に乗り、肥大化しすぎていると思います。

そういえば日ごろから夫は言っています。
「勤務医は拘束時間も長く、結果責任の追求が厳しいからうんと高い給料にしないといけない」って。
私も賛成です。入院して手術した時、遅くまで先生は診てくださり、朝は8時にまた病室に来てくださいました。感激しました。
そして良くなろうと心が体にいい作用をするような気がしました。

投稿: 侘び助 | 2005.05.30 14:16

侘び助さん、コメントありがとうございます。
「勤務医は拘束時間も長く、結果責任の追求が厳しいからうんと高い給料にしないといけない」って。

そんな事を言ってくださる人は、もはや「世界遺産」とか「国宝」級でしょう。
2年前まで大学病院勤務(講師)でしたが、独立法人化前は時間外手当は「0」でしたので、当直料を含めないと一ヶ月の手取りは40万円を割っていました。助手になる前の「医員」の時は(医師になって5年目くらい)、手取り6万円とかいう月もありました。子供が高校、大学に進学などになったら生活していくのがやっとというくらい。それが「バイト」と言う名の副業(他院での当直、手術。外来など)を生んで来たのです。

投稿: balaine | 2005.05.30 15:20

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