連休後半の入院(5/8の2つ目)
は、なんと2名だけでした。軽い脳梗塞が二人だけ。
私はフルートの発表会もあり今日を含め3日間休んでいましたが、その間の患者さんのことや入院の事は同僚からメールで連絡を受けていました。必要な場合には、携帯のカメラ機能を使ってCTやMRI、血管撮影の画像を添付します。これは私の所属する大学医局では5年前からやっています。当時は携帯電話でカメラ機能が優れているのは後のVodaphoneしかありませんでした。しかも出始めの頃は12万画素とかで画質も悪かったけど、CTで出血があるなどは十分わかりました。今ではDoCoMoも200万画素になっていますから、結構細かい脳血管撮影なども教授に転送して手術の指示を仰いだりできるので便利です。
こちらに戻って最初にした事は病院に行き、ICU, HCUの手術後の患者、新入院の患者を診ること。3日間診てなかったので患者さんに忘れられたかと思い、「わたしのことわかりますか?」と先週の火曜日に手術した70歳代のくも膜下出血術後の方に聞いたら、笑いながら「わかりますよ〜」と言われてしまった。明日で手術後14日になる50歳代の方と、7日目になる一人でクリッピングをした方は、それぞれに軽い失語症状がまだ残っている。言語リハビリを開始しなくては。明日、MRIを撮像して虚血の領域、血管などを確認する予定である。
連休にはいる前に症状が出ていたのだが、4月の上旬に大変な手術だったと書いた椎骨動脈解離によるくも膜下出血の患者さんが正常圧水頭症(NPH)の症状を出している。5/2のCTで明らかに脳室が拡大傾向で、いわゆるperiventricular lucency(側脳室周囲の大脳白室に脳脊髄液が滲みだしていってCT上の脳の色が黒っぽくなる事)も出現している。今週前半に脳室腹腔短絡術(通称V-P shuntを約してシャント術という)を行わなければならない。くも膜下出血(この人の場合は2回の破裂)で、脳脊髄液を吸収する脳表のくも膜顆粒の部分が無菌性炎症(血液が付着してそれが溶ける時に膜が反応性に厚くなったり固くなったりする事)を起こし、徐々に脳室に脳脊髄液がたまっていき脳全体の、特に深部白室の脳循環が低下するために起こってくるものである。早い場合はくも膜下出血後2、3週間でも発生するが、1ヶ月以上たって出てくる事が多い。中には3、4ヶ月経過してから症状が前面に出てくる。しかし、3、4か月経って急に悪くなった訳ではなく、しっかり観察していると毎日少しずつ何らかの変化(あれ?なんかおかしいぞ)というのがあるのである。しかし、くも膜下出血後というのはそういう感じであるので、すぐに「水頭症!」と騒がず経過をみるのが通常である。安易にシャント手術をするといろいろ問題が起こる事もある。
この患者さんは、水頭症は大丈夫かな〜?と思っていたのだが、2週間程前から少しずつ食欲の低下、軽い記憶障害などが出てきていた。一時的に水頭症症状があっても自然に乗り越えられるときもあるのだが、1週間程前から症状が顕著になってきたので5/2にCTを撮ったところ上記のような所見であった。シャント手術が効果を現すと、こんなに元気になるんですか?!と家族の方が驚く程患者さんの状態は変わる事が多い。中にはシャント手術をしても変化が乏しい方もいるが、たいていは70, 80才のの高齢で元々少し痴呆傾向があったり、出血が強かったりなどの問題がある人が多い印象がある。シャント手術をスムーズにおこなってすっきり元気になっていただきたい。
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コメント
はじめまして、@むーむーです。先日かってにTBさせていただきました。報告遅くなってすみません。私のページにbalaineさんをほめる、脳外科医さんの書き込みがありましたので、持って来ました。
『とても真っ当な人です。脳外科医として尊敬できるし、腕も確かな人です』
私も海綿静脈洞髄膜腫で手術やガンマナイフやらやってるので、とても興味深くこちらを拝見させて頂いてます。では。
投稿: @むーむー | 2005.05.10 02:37
@むーむーさん、はじめまして。(^^)
訪問させていただきました。凄い数のコメントですね。びっくり!
ちなみに私はヒゲをはやしていないのですが、4/16の記事『名前の由来」というところでbalaineの意味を説明しております。
プッ!可愛いとか、、、その通りですね(^^;;;
ゴジラさん、どなただろう。昔、脳外科医のMLをやっていたので知っている先生は少なくないのですが、「あの人かな?それともあの人かな?」と考えています。
これからもよろしく御願いします。
投稿: balaine | 2005.05.10 09:33
@むーむーさん。
小倉の学会でわかりましたよ、「ヒゲゴジラ先生」。
朝、ホテルで食事をとっていたら昔からよく存じ上げている、そのN先生に、「先生!ひげ鯨。僕、ヒゲゴジラ」と挨拶されてしまいました。
ヒゲゴジラ先生は、優秀で腕は超一流なのはもちろんのこと、素敵な人です(よいしょ、ヨイショ!)。私はヒゲゴジラ先生の執筆された手術書で手術を勉強しています。今回の学会でも大活躍されていましたよ。v(^^)
投稿: balaine | 2005.05.15 16:15