« いまだ開花宣言なし | トップページ | 学会参加 »

2005.04.19

手術は無事終了

 本日の「未破裂脳動脈瘤」の手術は、予定より少しオーバーし6時間かかったが無事終了した。患者さんは麻酔の覚めも良好で既に会話が可能。もちろん運動麻痺など無い。
 内頸動脈と前大脳動脈の分岐部に上後ろ向きに一つと、中大脳動脈の分岐部(いわゆるM1M2)にもう一つ。最初のは結構高い位置であった事と、IC topからA1(前大脳動脈の最初の水平部分)の穿通枝をかまないように注意する事とA1を狭窄しないように少し甘めにクリップをかける事で、ていねいに手術した。二番目のは、まず硬膜外に上眼窩裂が十分に出るように骨をドリルで削除して、可能な限り蝶形骨縁も削除した。この結果、側頭葉とシルヴィウス裂の太い静脈を側方に少し引く事によって直径12,3mmの大きめの動脈瘤の全貌が見えた。しかし、向こう側を回る中大脳動脈のM2の分岐部がわかりにくい。丹念に周囲を剥離してようやく分岐部が見えた。動脈瘤は中大脳動脈の分岐部全体が膨らんだような形で、bleb(daughterのような小さな瘤)が2個みられ、そのうちの一つは真っ赤で壁が薄く血流が渦を巻いているのが外から透見された。今にも破れそうな動脈瘤であった。手術してよかったと思う。
 しかし、いびつな形の瘤に無理にクリップをかけると血管が歪んで狭窄する。そこで6-0というサイズの細い糸で動脈瘤を縛って「寸胴」に「ウェスト」を作るような作業を行った。それによって二本の中大脳動脈M2は狭窄すること無くクリップをかけ得た。ただしM1末端部にふくらみが残ったのでここには側頭筋を薄く切って残った膨らみに被せて糊(フィブリンという血液成分から作るノリ)をつけて固定した。これで「破裂」は予防できるであろう。

 昨日夜重症の脳出血が入院した。直ぐに挿管して人工呼吸器を準備しておいた。夜中に呼吸が停止し血圧が低下した。すべて予測の範囲であったので、直ぐに人工呼吸器に接続。昇圧剤を投与した。家族にはhopelessである旨は告げていたが、東京在住の家族に会わせたいという。手術中に亡くなられるかもしれないと危惧していたが、手術が終了した直後に、本当に待っていたかのように心臓が停止した。遠方の家族も皆会えた、と長男の方は感謝の言葉を口にされた。いくら重症であるとはいえ、我々は患者さんを救えなかったのだが。
 実は、今日の手術の家族が聞いたらどう思うか心配だが、私は昨晩遅くにこの脳出血の患者さんを急患室で診察して入院させ、家に帰って寝床に入ったらすぐに病棟から電話で起こされ、その一時間後に別の病棟から電話で呼ばれ、更に夜中の4時に別の病棟の患者さんがけいれん発作を起こしたと電話があり、更に更に今朝の650には脳幹梗塞の患者で急患室に呼ばれ入院させ、そのまま今までず〜っと働き詰めである。結局、睡眠はトータルで5時間はとった。もちろん昼食もとった。しかし、100%成功を目指さなければならない難しい未破裂脳動脈瘤の手術の前、約14時間はそんな感じで過ごしていたのだ。こんな医者に自分の親を手術してもらいたいと思うだろうか?私が患者の家族だったらどうだろう?先生を信じる?難しいところだ。私の場合、超人的な体力、気力というより、自分に対する、自分の仕事に対するプライドで動いている。
 とにかく手術は無事に終わった。良かった。

|

« いまだ開花宣言なし | トップページ | 学会参加 »

コメント

毎日、プライドによって緊張感を持続させながら、ハードな仕事をなさっているんですね。
頭が下がります。

私は、今日は遠足で、愛・地球博に行ってきました。疲労からくる頭痛で辛かったのですが、それでも顔はニコニコ。これが私のプライドです。

今年は忙しくて、片っ端から仕事を片付けているのに、どんどん涌いてきます。
毎日7時半ごろまで仕事をして、その後、買い物をして、夕食の準備。我が家の食事はいつも、9時過ぎになっています。そんな自分をなんて働き者、と思っていたのですが。。。最近ミスの連続でへこんでいます。
とうとう、大慌てで出張に出かけて、駐車場で同僚の車にぶつけてしまいました。

こんなにミスが続くと、自信喪失してしまいます。
つい鞍結節髄膜腫で脳の深部を触ったからだと病気の責任にしたくなります。その方が気が楽になるので。。。

ミスを減らす努力をしないとますます仕事が増えてしまいます。この悪循環の断ち切るには、どうすればいいのでしょう?

投稿: ふにゃ | 2005.04.21 22:04

ふにゃさん、こんにちは。
学校の先生も大変な仕事ですよね。精神的なストレス、生徒、親そして学校からの期待感と共に不信感などに悩みは少なくないはずです。
「ミスを少なくする」
どうすればいいのでしょうか?人はミスをするものです。

私なりに考えると「想像力をたくましく」する事だと思っています。
つまり「あらゆる事態を前もって想定できる想像力」が必要だと思います。
「こんなことが起こるなんて考えても見なかった」というのは、想像力が欠落しているというか能力不足なのだと思います。ちょっと言い方が強いですが。
医療の世界でも、何かが起こって火事場の火消しのようにばたばた走り回るのではなく、予測力、想像力を働かせて、前もっていろんな「手」をうっておく事が大事だと思います。何かが起きてから騒ぐのではなく、起きないように準備しておくこと。ミスを起こさないように、と考えるのではなく、ミスが起こる場合のことを想定して、それは予測の範囲内だと言う感じでスマートに前もって準備していた事を実行できればいいのではないでしょうか?

投稿: balaine | 2005.04.24 14:12

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74618/3772738

この記事へのトラックバック一覧です: 手術は無事終了:

« いまだ開花宣言なし | トップページ | 学会参加 »