« やっと咲きました。 | トップページ | 食事の事 »

2005.04.25

破裂脳動脈瘤、脳出血、そして、、、

 昨日、日曜日、私は出番だったので朝の9時から回診した。すべてを診終わって指示を書いたりして午後1時過ぎまでかかった。その後昼食を食べに出かけ夕方まで家でおとなしくしていた(フルートを久しぶりに吹いた!)。
 夜の8時頃、そろそろ夕食を食べに出かけようかな、と思っていたら急患室から呼ばれた。57歳のくも膜下出血、日曜の夜だし、これから準備して脳血管撮影を行っても夜中になるので、今晩は鎮静剤で寝かせて明日(つまり今日)脳血管撮影と手術をする計画とした。
午後10時半頃、仕方なくコンビニにお弁当を買いにいって夕飯とした(そうそう、私は一人暮らしなんです)。
家でそのわびしいお弁当を食べ終わった11時、また急患室から呼ばれた。脳出血である。
左側の被殻出血、結構な量はある。右半身の強い麻痺と全失語が出ている。患者さんは、2年前まで脳梗塞と小さな脳出血の後遺症で当科外来に通院していたが、同時に通っていた糖尿病外来とともにある日からぷっつり病院に来ていなかった。自己管理の不足による脳卒中である。
とりあえずHCUへ入院。血圧管理で安静治療とした。手術してもよい位の大きさであるが、高血圧性脳内血腫では、出血で壊れた脳の機能を手術で取り戻す事はできないのだ。意識状態が悪化したら手術する事とし夜中の0時半頃、病院を後にしようとしたら、またまた「ピーピーピー!!!」とポケベルがけたたましく鳴った。
今度は小脳出血である。午後10時半頃自宅で倒れて嘔吐し、町立病院を受診して、当院の救急外来に紹介されてきた。最初はしゃべっていたらしい。当院についたときも、尿意を気にしていたとのことである。私がCT後に呼ばれてみた時には、意識レベルが低下し呼吸が失調性になっていた。瞳孔も対光反応がなくなり角膜反射も消失している。78才。これから夜中に緊急で手術しても助けられるかどうか、助けても寝たきりか植物状態となる公算が強い。家族と相談の上、すぐに挿管してICUで人工呼吸器管理とした。この患者さんを診て帰宅したのが深夜の3時である。
そして朝6時に病棟から電話で起こされた。ある術後の患者さんの尿量の報告であった。

はっきり言って、とても疲れた。立っているのが、歩いているのがやっとという感じである。
しかし、午前中は外来がある。患者さんは待ってくれない。外来をこなしていたら、神経内科から「頭痛で受診した人をCT撮ったら、くも膜下出血です」と連絡がはいった!またか!
昨日入院させたくも膜下出血の患者さんは、午前11時から脳血管撮影を行った。右の内頚動脈と前脈絡叢動脈分岐部に直径8mm程の破裂脳動脈瘤が見つかった。しかもその動脈瘤と並ぶように、右の内頚動脈と後交通動脈の分岐部にも3〜4mm位の小さな「未破裂」と思われる脳動脈瘤が見つかった。
開けてみるまではどちらが破裂したかはわからないが、だいたいは大きい方が破れている。しかも形が多少いびつで脳に癒着して破裂したような感じである。この手術を午後からやろうと思っていたが、昨晩入院させた小脳出血の患者さんが水頭症を呈しているので、まず脳室ドレナージだけでもやってあげようと言う事になって。まず小脳出血+水頭症の脳室ドレナージを行った。
その後、今日神経内科に歩いて来院した77才のくも膜下出血の脳血管撮影を午後3時から行った。
一番多い場所、前交通動脈破裂脳動脈瘤であった。明日手術する事にした。いくら私がタフでも、睡眠時間3時間でふらふらになりながら緊急手術の中でも神経を集中して当たらなければならない破裂脳動脈瘤の手術を夜中まで2つ続けて行うのは無理がある。がっちり薬で鎮静させ、明日手術する、ことについて家族から了承を得た。
実は、明日は予定時間8時間の脳腫瘍の手術が組んであった。脳腫瘍の手術は緊急性が乏しい。木曜日の脳外科の手術枠に移動させてもらった。看護師によると、その患者の家族の一人が、「なんでうちのが延期されるのか納得いかない!」とごねているそうである。でもきちんと理解してくださった家族もいたという事で、これから手術にはいる私は関わらない事にした。
そして午後5時前から8時半くらいまでかかって、昨晩入院した2つの脳動脈瘤の方の手術を終えた。手術中もなんとなく調子が悪く、頭痛と腹痛がした。しかしなんとか歯を食いしばって手術を終えた。本当は体調万全で臨まなければならないのだが、昨日からの状況がそれを許してくれなかった。手術が終了するや否や、カンファランスルームのソファにうつぶせに倒れるように寝た。
30分くらい寝たであろうか?はいってきた看護師さんの物音で目が覚めた。
「患者は?」と問うと、「もうICUに行きましたよ」とのこと。
あわててICUに走った。患者さんは、大きな問題は無いのだが、前脈絡叢動脈と後交通動脈が内頚動脈の後ろを回って、ちゃんと血流が通っている事、クリップがそれらの枝をかんでいない事を確認するため一生懸命出血や脳脊髄液を吸引してみたせいか、右の動眼神経麻痺が出現してしまった。神経は直接触っていないと思うのだが(その姿がきちんと見えた訳ではないので)、奥の奥にある脳底動脈の周囲までくも膜下出血のclotを取ったためであろう。多分一過性で1、2週間で回復してくれるはずである。手術は、その事を除けば大過なく終わった。
脳室ドレナージ中の小脳出血の患者さんは、あいかわらず人工呼吸器である。
明日手術予定の前交通動脈破裂脳動脈瘤の患者さんは落ち着いている。待たせていた家族に脳血管撮影の結果を説明し、明日の手術の同意を取った。
明日も忙しそうだ(木曜日にのばされてごねている家族にはどう対応しようか、、、)

あれ?!夕飯まだだった。食欲ないな〜。。。(4/25 23:20)

|

« やっと咲きました。 | トップページ | 食事の事 »

コメント

えっ、えっ、えっ!!!の連続。
私のくも膜下出血になった時も、
発症した日(午後3時頃発症)は、
検査に暇がかかって、
夜中の2時頃血管造影検査が終わり、
その日の午前中、外来診察を終え、
続いて午後手術だったので、
家族はすごく心配したそうですが、
そんなモンじゃないですね。
(でもあの時も、私の他にも重症患者さんかかえてたのかナー?)
手術中に先生が倒れてしまうのでは?
あまり体力過信してはいけませんよ!

投稿: mayako | 2005.04.26 11:04

mayakoさん、リンクしていただき恐縮です。
なんだかリンクされている他のサイトが立派なのでわたしのだけ場違いな感じがします。それから「トップページ」へのリンクにはなっていなかったようですよ。
 mayakoさんはK大学病院だったのですね。あそこの塩○教授も存じ上げております。大学病院なら医師の数が多いので、一人一人の医師にかかる負担は分散できます。我々のような市中病院は多かれ少なかれ日本中どこに行ってもこんな感じです。1週間急患の入院が0なんてことも稀ですがあるんです。相手は病気ですからね〜。忙しいときは徹底的に一人が忙しくなった方がいいんです。みんなが疲れると大変ですから、一人で頑張れるまで頑張って残りは他の先生が頑張る、というのが日本の市中病院の脳神経外科の世界だと思います。

投稿: balaine | 2005.04.26 21:48

  大学病院に勤務していた時から、いや学生の頃から脳外科医ってすごいってタフですごいって思い、今もやっぱりその働きぶりに頭が下がる日々です。
よく脳外フィックス2年目の先生に、「頼むよ〜、もう無理だよ、体力切れ、(ICUのベットを指さして)あそこで少し寝かせて」なんて言われたりします。空いているときはどうぞどうぞと使ってもらってます。(今の勤務している病院には当直医用ベットがないようです。)
  
  先生のところも漏れることなく忙しいようですね。本当に頭が下がります。第一線で活躍してくれる先生のような立派な方が、地域の健康レベルを維持してくださっているのだなぁと実感しました。 手術しても救命、延命でしかないといったケースももちろんあると思いますが、やはり意識レベルが低下して搬送され、脳外科医の先生の必死な治療と患者さんのがんばりで、乗り越えて元気に帰っていく姿をみると、いい仕事だなぁって尊敬します。

投稿: mrbin | 2005.04.27 00:24

mrbinさん、コメントありがとうございます。
言うまでもない事ですが、私は緊急患者が来たら全部手術している訳ではありません。手術の必要な方にだけ当然必要な手術をしています。この6日間の間にも、どんなに一番良いシナリオを考えても「寝たきり」「植物状態」にしかなり得ないと考えられる「重症脳梗塞」と「小脳出血」の人には手術をしていません。
 くも膜下出血などは術後の全身管理が大変ですが、ICUや病棟の看護婦さんたちがよくやってくれるので、ほとんどの方が良い結果に向かわれます。笑顔で退院される時には、手術したときの苦労なんて忘れてしまいます。

投稿: balaine | 2005.04.29 01:02

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74618/3858542

この記事へのトラックバック一覧です: 破裂脳動脈瘤、脳出血、そして、、、:

« やっと咲きました。 | トップページ | 食事の事 »