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2005.04.18

いまだ開花宣言なし

 私の住んでいるこの地域は、県内では桜の開花が最も早い地域になります。例年ならもう咲いていると思います。昨日が開花予想だったのですが、寒冷前線が接近し、日中の最高気温で12度と冷え込み、開花しませんでした。今日はお天気ですが風はまだ冷たいようです。今週末までには開花すると思いますが、お花見はまだ先になりそうです。
 今日は予定手術はなし。昨日は、高齢の重症くも膜下出血の患者さんが「脳出血」という診断名である公立病院から救急搬入されてきました。脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血とともに脳内血腫も作っていました。だから脳出血でも間違いではないのですが、「くも膜下出血」を認識しているかいないかで大きな違いがあります。脳室内にも大量に血腫が破れて「脳室内血腫」も作っていました。かなり厳しい状態なので生命の危険にあるということを家族に説明しICUに入院させて経過を見ました。脳室拡大もあり脳室内血腫もあるので、脳室ドレナージをすれば少し状態が改善するかもしれない。
 「脳室ドレナージ」というのは、頭蓋骨に1円玉位の穴を開けて、硬膜を切開し、脳室という脳脊髄液を作り出して貯めておく水槽の様な部分に細く柔らかいストローのような管をさして、水槽の中の水(脳脊髄液)を抜き取る手術です。ただ抜いてしまうのではなく、圧を調整する装置をつけて脳の圧を水柱で10cmとか15cmという高さにコントロールします。脳室内血腫で水頭症を来している場合は、血腫も脳脊髄液とともに外に流しだす事が可能です。それによって患者さんの具合を改善させられる事がよくあります。その手術の準備をしていたら呼吸が停止しかけました。血圧も低下しました。くも膜下出血が大量で脳幹の機能が低下したと考えられました。もはやドレナージでも助ける事は難しいと判断しました。家族に状況は厳しい事を告げました。その2時間後、お亡くなりになられました。
 くも膜下出血は、一般に一回破裂すると30%が命を落とす病気と言われています。しかし当院では急性期から可能な限り積極的な治療を行い、たとえ重症で急性期に手術ができなくても全身管理を徹底して手術に持ち込んでいるので、くも膜下出血患者の死亡率は10%くらいだと思います。更に開頭手術を行って亡くなられた方はほとんどいません(ここ1、2年の間に手術した患者で亡くなられたのは、かなりの肥満があり手術後4週間程経ってから胆嚢炎から腹膜炎を起こし最後は肺塞栓を来した患者さんくらい)。どんなに重症でもこうして亡くなられるのは残念な事です。農繁期に入るので忙しいせいか、高齢だからなのか、ご家族が以外にあっさりしていたのには少々驚きましたが。
 我々脳神経外科医は、死亡率0%を目標に闘ってはいるのですが、治療の結果重篤な後遺症を起こしたり寝たきりや「植物」状態になっては人間としての尊厳という問題もありますから、「命を助けさえすればいい」というものでもありません。常に悩むところであり決して「正解」の出ない領域でもあると思っています。明日は「未破裂脳動脈瘤」の手術です。一人の患者さんに二個瘤があります。全く無症状で脳ドックで偶然見つかったものです。本人、家族から(しかも娘さんは看護師)十分にI.C.はとってあります。でも、無症状の人を手術するのですから、100%成功させて無症状で帰さなくてはなりません。破裂動脈瘤よりもある意味でプレッシャーがかかり責任は重大です。
 開花宣言はまだですが、桜は、例年より遅くなったとしても必ず咲くでしょう。

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