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2005.03.17

診断書のこと

病気や怪我で病院にかかった場合、医師に診断書をかいてもらうことは少なくないと思う。
交通事故などの場合は警察に提出する診断書。勤務中の怪我などでは職場に提出する診断書。これらはだいたい「病院の」診断書である。つまり特別な形式はなく、名前、生年月日、住所、診断名、症状や治療の内容と治癒の見込み、日付、病院名、医師の署名、捺印で構成される。
一方、生命保険会社などに提出する医療保障保険の診断書の場合は記入する内容が増える。たとえば診断名と「その原因」、通院期間や入院期間、前医の有る無し、手術の有る無し、手術があれば手術名、放射線治療の有無など。ガン保険の場合は、病理診断名、本人に告知しているか否か、などなど多岐にわたる。
その他に、職場に提出する労務不能に関する保障を得るための診断書。一人で3通も4通も診断書を請求される人も珍しくない。もやもや病など特定疾患に対する医療費免除のための診断書、、、まだまだいろいろある。
脳神経外科医にとって最近増えているのは、「介護認定に関わる意見書/診断書」「肢体不自由の診断書」。特に介護保険法の制定以来、脳卒中の人はかなりの割合で意見書を要求してくる。

季節は春。年度末、ということもあるのだろうか。最近、診断書が多い。毎日、2、3通から5、6通は書かされている。棚が隣の整形外科の先生のところには、診断書を書くためのカルテがうずたかく積み上げられている。医師は、何も故意に診断書を書くのを遅らせようと思っている人はまずいないと思う。忙しいから書く時間が少ないのが現状だ。少し時間ができたとしても、忙しい診療の合間にコーヒーを飲んだり新聞を読んだりする「寛ぎタイム」だって欲しいと思う(私にはそんなタイムはほとんどとれないが)。その時間を削って診断書を書くというのは心理的につらい作業であることは事実である。事務から催促の電話がかかる。
「○×さんの診断書、なるべく早く頂きたいのですが」
「△□さんの診断書をおいておきましたのでお早くお願いしたいのですが」
「(はいはいわかりましたよ、早く書けばいいんでしょ、でもご飯食べる時間くらいちょうだいね)わかりました、、、」

医師は医師法によって、患者の求めに応じて可及的速やかに診断書を記載しなければならない。しかし、診断書は「公文書」なので適当なことを書くわけにはいかない。外来カルテ、入院カルテ、時にはCTなどの資料が必要である。交通事故で外来を受診して「警察と職場に出す診断書をお願いします」と言われた場合には、即座にその場で書いて渡すこともあるが、保険会社関係やその他の診断書は多くは病院の文書係で患者さんから「書類」を預かって、それを事務的に担当の医師に書かせることになる。
私のつとめる病院は県立病院であるが、たいていの公立病院では診断書料はすべて病院側の収入になっている。ところが診断書料というのは「自由診療」なので、「CTを撮ったらいくら」というような保険点数がない。つまりCT撮影なら、日本全国どこでどんな種類のCTで検査しても「同じ料金」であるが、「自由診療」である診断書料は医師や病院が勝手にその金額を決められる。常識的な線があるので、全国どこへ行っても値段にそんなに格差はないはずではあるが、最大で2、3倍の料金の差が生じることもある。
我々の病院では、医局に診断書用の棚がすべての医師用に作ってあり、医師は毎日そこをチェックして診断書とカルテがあったら、診療の合間をみて記載し事務に返却することになっている。でも、せこい話であるが診断書を何通書いても一銭もはいらない。10通書くと、その診断書の種類によって金額に差があるものの、およそ5000円から20000円くらいの文書料が病院の収入となる。本来、医師が記載する診断書は、自由診療なのであるから全額医師に入るべきものだと思うのだが、いつのまにか役所、事務系に丸め込まれたのか、一銭も入らない。私立の病院では、これはあんまりだ、ということで病院と医師で半々の折半にしているところもある。つまり1000円の診断書を書いたら500円医師の収入となる。
ほんとにせこい話と笑われるかもしれないが、医師がその国家資格をもって公文書を書いてもそれが医師の収入にならない、というのは本当はおかしいような気がする。

現実問題として、外来で患者に気を使って、手術で疲れて、医局に来るとたくさんの診断書がおかれているとうんざりする。「昨日もあんなに書いたのに、またこんなにあるの?」という気持ちである。診断書料を何割かでも収入にしてもらえるということなら、診断書を急いで書くinncentiveがおこるような気がするのだが。私の考えは世間一般の常識から見ておかしいだろうか?
きょうも、さきほど手術が終了してから医局でコーヒーを飲みながら、4通の診断書を作成した。

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コメント

2000万円の診断書ってどんなのでっか?

投稿: 通りすがり | 2005.03.17 23:19

公立病院でも半々にする施設はあります

介護意見書なんて書くところ多いから
前回の丸写しじゃないときは
一枚15分はかかってしまう(泣

投稿: いのげ | 2005.03.18 00:12

診断書や紹介状は、本当に手間がかかりますよね。僕が大学で働いていたときは、「The ご紹介」というソフトを使ってました。http://rd.vector.co.jp/soft/win95/business/se229508.html

これだと、診断書一枚分を打ち込んでしまえば、自動的に色々の保険会社の診断書のフォーマットに対応して印刷してくれるので、時間の節約になります。ただ印刷位置の設定にちょっと手間取りましたが。是非試してみてください。

投稿: Hideki | 2005.03.18 05:59

ドクターの皆様、大変お疲れ様です。
私はある病院で事務をしている者です。
3月から文書係担当になります。
一番、恐れていた仕事です。
あの仕事だけはやりたくないと、
そう周りも言っています。


毎日、患者さんから
「書類はまだか?おまえの病院はいったい何をしているんだ!!」と怒りの電話がジャンジャンなり、
ドクターに催促すると、
逆ギレされて、電話を途中で切られたりということも日常茶飯事。
問い合わせがしょっちゅうはいるので、
お昼も休憩もありません。

文書係は一人しかおらず
帰りも遅く、
土日出勤もしないと仕事がまわりません。
時間外勤務の手当は一切出ません。
お給料は手取りで月10万円強。
ボーナスは夏と冬、それぞれお給料の1ヶ月分です。


お医者さんは、事務と比べたら
ストレスの種類も、重さも違いますが、
みんな、それぞれに苦労しています。


事務の苦労もご理解いただけるとありがたいです。

投稿: p9513 | 2009.01.29 23:40

p9513様、ご苦労様です。
お勤めなのは私立病院でしょうか?
書かれている内容からすると、貴院の診断書係というシステムがダメなんだと思います。システムの変更もお考えになってはいかがでしょうか。
診断書がすぐに欲しい患者さんと、多忙故すぐに書けない医師の間に入るからダメなんだと思いますよ。
「事務職」なんですから事務的に取りつげばよろしいのでは?
患者「診断書、まだですか?いつ頃できますか?」
事務「担当医と病院運営委員会に急ぐよう伝えます。」
、、、
事務(医師へ)「患者さんから○回目の診断書の催促がありました。」
事務(病院執行部へ)「○○回以上の催促のあった診断書は現在XX通あります。診断書未記入の医師のリストはこれこれです。」
事務(医師個人または医局へ)「○○回以上の催促が会った場合、依頼があって○○日以上経過した場合は、病院運営会議に報告致します。」
などときわめて「事務的に」処理すれば良いのではないでしょうか?休憩も取れないとか土日も仕事しているなど、仕事のやりようで変えられるように思うのですが。

もしも事務職の給与と医師の給与を比較して、事務だって多忙なのにと思っていらっしゃるとしたら、それは「国家資格」の有無と法的責任の有無の差だとお考えください。
医師は、医学部で6年間学び、国家試験を通って、始めて診断書を書く資格が与えられます。
能力の有無とか忙しさの程度ではなく「資格」です。
また、医師が書く診断書はほとんどのものが「公文書」です。ですからちゃんと書かなければ公文書偽造の罪に問われる可能性もあります。

病院勤務医の場合、例えば診断書料の半分が給与になるとすれば、医師も結構頑張って書くのではないかと思いますよ。私は今開業医なので、診断書料は丸々「収入」となりますから、喜んで可及的速やかに書いております。

投稿: balaine | 2009.01.30 00:33

p9513様、
書き込まれたメールアドレスはダミーでしょうか?
-----@ybb.ne.jpのアドレスにメールを送りましたが、failureとなります。
実はあなたがアクセスカウンター35万をヒットさせた可能性があります。
自己申告とそれをアクセス解析でチェックした上で、ヒットの是非を検討しますので、35万ヒットの方は申告して下さい。

投稿: balaine | 2009.01.30 00:54

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