『せんせい、ありがと』
昨日手術した患者さんは術後経過良好で、HCUから一般病棟に戻った。氷をなめたい、ということであわせて飲水も許可した。
昨日の夜、緊急入院した慢性硬膜下血腫の77才の患者さんは今日の午後手術をした。術前には、目は開けていてもボーっとして名前を呼んでも返事せず、何を聞いても答えられない状態にまでなっていた。術直後にすぐにお話しをするようになり、遠くから来ている妹さんの名前を呼びその人がどこに住んでいるかを答えられるぐらいになった。
脳神経外科医として、いろいろ難しい病気もあるけれど、自分の手術で患者さんが良くなるのをみるのは本当に嬉しいものである。この仕事へのプライドと「人の役に立てた」という想いが強い満足感となって心を満たしてくれる。そんなときに、患者さんや家族の方から「ありがとうございました」と一礼されることは医者冥利、脳外科医冥利につきる感じである。
何も「ありがとう」と言ってほしいとは思っていない。しかし「うまく行きましたね」「大丈夫ですよ」という声をかけたのに対して「本当ですか?」とか「じゃいつ退院できますか?」とか言われるのに比べて、「先生、ありがとうございました」と言われればこんなに嬉しい事はない。手術前はきっと不安だっただろう。でも僕を信じて、僕の言う事を信じて手術を受けてくれた。または意識障害のある患者に代わって家族の方が必死の思いで、医者の言う事を信じて手術を了承してくれた。その期待に応えられた。自分が持てる能力をフルに使って行った治療がうまくいってそれに対して感謝の言葉を頂く事が出来た。普通の人が食事したり風呂に入ったり寝ていたり遊びにいってる時間に、救急外来に来て病棟に来て手術をして疲れたし肩も痛いし寝不足だし腹も減った、けど嬉しい!幸せだ!とつくづく思う。
医師をしていて、脳外科医をしていてよかったな、もう少し頑張って続けよう!と思う瞬間である。
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コメント
こんにちわ、Interclinicのkuuといいます。お仕事御苦労さまです。
アート系ホームページ→医療系サイト、の流れは同じだなー、と思って読んでました。自分の場合はあまりにマイナー趣味なので、ヒトサマに言うのがちょっと恥ずかしい・・。
最近のブログブームで勢いで医療系ブログを出してみて、ちらちら皆さんのところにお邪魔しています。まあスライド作りから逃避してるとも言いますが(笑)。「ありがとう」のことばに救われることは多いですね。それがあるから続けられるのかも。
ところでくも膜下出血では痛い記憶があるので、腕組みで読んでました。医療者として何をどこまででき、それで何が得られるのかというのは本当に難しいと痛感しています。またきますね。でわでわ。
投稿: kuu | 2005.01.23 19:11